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2018年度

「地方創生賞(コト部門)」

コト糸島マーケティングモデル
福岡県糸島市

概要

⽷島市では、⺠間企業の外部講師を招聘した特⾊あるマーケティングの授業をもつ「博多⼥⼦⾼校」、また同年7⽉に、地元の⾷材、⼈材、技術等を結び付け、新商品開発や販路開拓、地域ブランドの創出等を図るため、第1次〜第3次産業従事者で設⽴された「⽷島市⾷品産業クラスター協議会(以下クラスター協議会」)」と連携し、地域事業者のマーケティング⽀援を実施する⽷島市マーケティングモデル推進事業を⽴ち上げ(平成28年9⽉)に、産官学を広く巻き込んだ取組みを開始した。⽷島市は、⼩売・卸売業の販売額が福岡都市圏17市町でワースト2、法⼈市⺠税収ワースト1など域内産業が乏しいため、雇⽤が少なく、⽣産性の向上が急務である。産業関連データや事業者アンケートの結果、地域の零細事業者は販路開拓、宣伝などマーケティングに関する項⽬を課題としていることがわかった。また、飲⾷料関連の⼩売業や製造業だけは、全国平均の2倍ほど稼ぐ⼒を持つことや、他産業への経済波及効果が⾼いことがわかり、ここを強みに伸ばすことで地域経済を豊かにしていきたいと考えた。具体的にはクラスター協議会から商材を募集し、当該商品を地域の事業者と⼥⼦⾼校⽣たちが共にマーケティングをしていく。その第1弾商材として、⽷島市の4⼈の漁師が15年以上作ってきた「⽷島産ふともずく」、第2弾して、地元⽔産加⼯会社の (株)やますえの「⽷島産天然真鯛だし」、第3弾として(株)タケマンの「⽷島産めんま」に取り組んでいる。⽣徒たちと⽷島の事業者は、2年間にわたり、ふともずくの収穫体験、真鯛加⼯⼯場や⽵林の⾒学、漁師、企業社⻑の授業への参加など双⽅向で交流し、開発段階から市場やターゲットを考えた上で、常温品、デザインの⼯夫、容器の材質、ネーミングなどを決めていく。事業者だけでなく、⽣徒たちも企業訪問し、販路を開拓し、催事等でプレゼンし、テレビなどの対応もこなす。そして、単に経済活性化だけを追求する取組みではなく、漁業後継者の育成、地域資源の保全、放置⽵林対策といった、持続可能な地域づくりや社会課題の解決に資する取組みとしており、さらには、卒業していくときに、次の後輩たちにも意思が受け継ぎ、「⽷島の商品に関⼼が⾼まった」「⽷島で働きたい」「⾃分も商品開発の先⽣になりたい」など、⽷島市外の⾼校⽣がプロジェクトに従事することで、「関係⼈⼝」の創出にも寄与している。

PRポイント

⼀⾒、⾼校⽣がマーケティングをするという教育⽬的な箇所に⽬が⾏きがちであるが、実際の取組みは、⽷島産天然真鯛だしの例にとると、加⼯段階では、アラに焼を⼊れ、特殊な技術で臭みの出ない⼯場を探し当て、ようやく鯛エキスの抽出に成功。何度も料亭やホテル、百貨店などを回って料理⼈、消費者に味を確かめてもらい、⼀切妥協せず、10回以上にわたり試作を繰り返した。⾼校⽣たち、市職員もこの⾏程に加わり、⾃分たちで真鯛漁師たちの話を聞き、加⼯⼯場を視察し、商品に引き継がなければならないストーリーを考え抜き、2年⽣での商品開発から、3年⽣になり、企業の訪問営業を⾏ったり、催事等で販売をして奮闘している本格的なマーケティング活動になっている。⽣徒たち⾃ら、⾒積書の作成、企業への電話・訪問・プレゼン、催事での販売など⾼校⽣⾃らが⼤⼈さながらの活動を実施している。反対に⾼校⽣の授業と合わせて、⽷島市内の事業者がマーケティングの学習をすることが可能になっている。地元のものを使って商品開発で終わってしまうのではなく、開発当初から市場データの分析、販路の意⾒をもとに、出⼝を⾒据えた商品開発や販売戦略を⽴てることでマーケティングの成功率を⾼める他にない取組みを実現しているところも特徴であり、1〜3次産業従事者が関与することで、6次産業化モデルとしても、農林⽔産省の九州優良事例として選定されるなど広く知っていただくことで全国的な参考事例となりうる。また、第⼀弾の⽷島産ふともずく、第2弾の⽷島産天然真鯛だしは、これまで企業独⾃に商品開発をしてきた同類の商品の数倍に及ぶ売上を達成し、実績も得ている(⽷島産めんまは平成31年4⽉以降の発売)。また、クラスター協議会と連携することで⾷品に関連する地域事業者を広く巻き込むことができるだけでなく、博多⼥⼦⾼校の2年⽣で商品開発、3年⽣で販売実践という2年間の⼀貫したカリキュラムにより、継続的な取組みとなっている。地⽅⾃治体が調整役となり、地域にあるヒト、モノなどの資源を活⽤した地域商社のモデルとも呼べる取組みとなっている。