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2019年度

「地方創生賞(交流コンテンツ部門)」

交流コンテンツ部門白川郷・超人気イベントの
完全予約制の設計・導入で地域住民の悩みを一掃
岐阜県大野郡白川村

概要

岐阜県・北部の豪雪地帯、白川村(通称:白川郷)。世界遺産にも登録されている白川郷は、人気の観光地でありながら居住地でもあるという珍しい地域です。近年の観光客、特に訪日外国人客の急増により、地域住民や自然環境にマイナスの影響を及ぼし、その結果地域住民の幸福度や旅行者の満足度も低下させるという「オーバーツーリズム」(*注1)問題を引き起こしています。現在では人口1,600人弱の地域に対し、年間170万人もの観光客が訪れています。この地で毎年1月から2月の週末にかけて年6回のみ開催される冬のライトアップは、2020年で34回目となります。今では超人気イベントとなり、ここ数年、渋滞、混雑、観光客同士の喧嘩、地元住民の負担増、マナー違反、ゴミポイ捨てなど数多くの問題が山積みとなっていました。そこで弊社では地域住民の理解を得て完全予約制を設計・導入し、渋滞・混雑緩和を図るとともに申込時のデータ活用から地域住民の負担を軽減させる、また来場者の満足度を向上させる取組を行いました。今でこそ訪日外国人からも人気のライトアップですが、34年前の開催した当初は全く異なる状況でした。各都市からのアクセスは不便で、豪雪地帯である白川村は、世界遺産登録前はほとんど誰も足を運ばないような地域でした。当時を知る人曰く、一冬に観光客が2桁に達しないことも多々あったそうです。そして当時の村民が、「誰も来ないこの冬に何とか足を運んでもらえることはできないか?」と知恵を絞り、実行し、現在唯一残っているイベントがライトアップなのです。それでも第10回目近くまでは100人以下のこじんまりとしたイベントでした。その後、世界遺産登録や高速道路の開通などの影響もあり、過剰な混雑に至るまでの人気イベント、地域となりました。弊社では開催した当時の"ひとりひとりのお客様を大切にする”という村民の精神を取り戻して欲しい気持ちから、来場者数は限定されますが完全予約制の設計と導入を実現しました。
(*注1)オーバーツーリズムとは、観光地が耐えることができないほどの観光客が押し寄せる状態のことを指します。

PRポイント

ここ10年ほどで白川郷には多くの観光客が来るようになりましたが、失われつつあるものが結(ゆい)の文化です。この地域に継承される結は、相互扶助の精神でかつては茅葺き屋根の屋根葺き(屋根の葺き替え)の際には、村民総出でお互いを助け合っていました。しかし時代の変化と共にこのような光景は見られなくなり、更に結の文化自体が薄れてきています。更に観光客急増により、ひとりひとりのお客様へのおもてなしの時間がほとんどなくなってきています。弊社では地元の祭りであるどぶろく祭りのボランティアとして参加し、様々な住民の方と接する中で、一番の悩みはライトアップということがわかりました。住民の手に負えないイベントとなってしまい、早急に解決策を望んでいました。そこで弊社では、2017年にライトアップでは通訳ボランティアとして現場に入り、全ての問題点や課題をリストアップし、導き出した回答が完全予約制でした。要点は制度設計であり、たまたまこの地域の特性・イベントに合致したものが完全予約制でした。2019年1月から完全予約制を導入しました。2018年以前は駐車場に入るまで平均2時間掛かっていたものが、導入後最大10分に短縮、これまで15人導入が必要だった地域住民ボランティアをゼロにし地域の負担軽減も実行しました。そしてイベント会期中の村内でのトラブルなどは8割以上が解消されました。しかし我々が実現したいことはオーバーツーリズムの解消ではなく、地域住民と観光客が共存する社会です。来場したお客様は、雪の掛かった合掌造りの屋根に照明される綺麗な景色を求めていることはもちろんですが、アンケート調査からも多くの方が地域住民との交流を求めています。実現したい社会に向け今後も引き続き、地域住民やお客様と日々対峙し、改善・改良していきたいと考えています。ライトアップでの取り組みは始まりの一歩にすぎませんが、白川郷にとっては大きな一歩を踏み出しました。そして白川郷のみならず他の地域でも、地域に合った制度設計をし、地域住民と観光客が共存する社会を創り上げていきたいと存じます。


参考サイト