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2020年度

「地方創生大賞(コト部門)」

コト部門「オソト天国」長門湯本温泉街の
丸ごとリノベーション&マネジメント
山口県長門市

概要

本事業は、面的なエリア再生に向け、ビジョン構築から地域合意・公民の投資、持続可能な地域経営スキームまで一貫して進めるエリアリノベーション事業である。【ビジョン構築】山口県長門市の音信川沿いに広がる長門湯本温泉街は、団体客から個人客への旅行ニーズ対応の遅れから、宿泊者数がピーク時の約半分に減少、活力を失っていた。この中で、創業150年の老舗ホテルの廃業が廃業、これを契機に、市は廃屋を公費で解体、跡地には星野リゾートを誘致、さらには星野リゾートと連携し、2016年に温泉街再生に向けた計画を策定した。つまり、活力を失いつつある地域で事業投資を生み出すため、行政はマイナスからゼロへの投資を行うとともに、再生に向けては「敷地主義」を脱し「面的再生」の視点で、新規投資事業者を核にビジョンを描く手法でスタートした。計画では、地域資源を洗い出し、これを最大限引き出すためのランドスケープとそぞろ歩きの提案、全国トップ10という明確な目標を提示した。【事業推進】事業推進に当たっては、①温泉街の共有の資源となる公共空間(河川・広場・道路)を圧倒的に使いこなす②コア事業を民間事業で成功させる③既存地域事業者の活性化④新規事業者誘致の4つの柱を設定、その柱の成立基盤となるランドスケープデザイン、景観ガイドライン、リスクマネーの供給も並行して進めた。その結果、①川床や親水広場の実現による親水性の向上、駐車場の移転と道路空間再編によるウォーカブルな構造への転換、②赤字垂れ流しに陥っていた公衆浴場「恩湯」の地元経営者による民設民営での再建、③既存商店の景観修景・新規事業(3件)やエリアと連動した旅館の新規投資(5件)④20年間新規店舗の無かった温泉街での7軒の新規店舗などが実現した(件数は2020年末時点)。【持続可能な地域経営スキームの構築】インフラ投資や新規民間事業の推進と同時に、温泉街の持続可能性確保に不可欠な地域経営を担う仕組みを構築した。具体的には、エリア経営を担う主体として、DMOとエリアマネジメントの両方を担うまちづくり会社(長門湯本温泉まち株式会社)が立ち上がり、全旅館の合意の下で入湯税を引き上げ、まちづくり会社の活動財源及び今後の行政インフラの更新のための基金へと充当する、安定的な地域経営の基盤を構築した。さらに、この取組に対し、客観的かつ専門的な視点で進められる外部評価の枠組みをスタートさせている。

PRポイント

計画の検討・策定から約4年という短期間ながら、地域合意の下、地元民間事業者が主導して地域資源を活かした唯一無二の「オソト天国」を生み出した。【丁寧な地域合意とスピーディな事業推進の両立】企画・推進は、必要な各分野の専門家及び地元有志で構成する実務検討体制と、長門市長及び地域関係者で構成する意思決定体制を構築、実務的提案と透明で正当性ある意思決定が両立する体制で行った。地域住民とは、社会実験手法により、ビジョンを暫定的に実現、目指す姿の共有と課題の洗い出し、対策の具体化を、各分野で繰り返し、交通再編や公共空間活用、景観形成等を具体化した。さらに、これらを担う地域組織としてオソト活用協議会を立ち上げ、維持管理や利活用を継続している。【行政・民間・地域の連動により実現する唯一無二の地域資源開発】上記体制の下、行政・民間・地域が連動することで、類まれなコンテンツを組成した。市営の下では過去10年間で約6億円の赤字状態に陥っていた公衆浴場「恩湯」は、周辺インフラ投資と適切なダウンサイジングにより民設民営の事業組成を可能とし、地銀のプロジェクトファイナンスで地元若手経営陣自ら再建、地域の歴史を守る神話の表現、自然湧出泉を味わう浴槽、広場の一体運営を実現している。温泉街の中心を流れる音信川には「川床」が実現した。行政も連携した社会実験により、増水時の対応を明確化し法令上の治水対策をクリア、公民一体による全国でも類を見ない河川活用と言える。さらに、「地域と新規参入企業の協働」を星野リゾートと進めた。具体的には、企業誘致の枠を超え、面的再生の基本計画提案、2020年3月開業の界長門ではブランド初の宿泊者外向けカフェ運営、地域イベントの企画・運営へのスタッフ参画など地域魅力向上の目的の下、協働している。【持続可能な観光地経営の仕組みと人材採用、外部評価】継続的観光地経営は、エリアにコミットする株式会社「長門湯本温泉まち株式会社」(2020年3月設立)が立ち上がり、エリアブランディング、コンテンツ組成、コロナ下での事業者間連携等実績を上げている。マネージャーは半常駐、二拠点での活動を可能とし、広い視野と地域の利害調整を両立する人材を確保、その評価には、観光地経営の観点から外部評価の仕組みを組成、観光地経営に向けた独自指標を定めて客観的な評価を加え、安定財源と攻めの地域事業運営の両立を可能としている。